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水耕栽培

近年、農業で水耕栽培が増加しつつある。レタスなどの葉物野菜に加えて、イチゴやトマトその他多数の植物の栽培に利用されている。 特にトマトでは水耕によって17000個以上の実をつけ85.46 m2という世界一成長した「トマトの木」が栽培された実績もある(えこりん村・とまとの森、北海道恵庭市)[1]。 水耕によって植物の成長が促進される要因の一つに土壌よりも根の伸長が可能であることが挙げられる。 当サイトでも検証した(>アズキ実験③土壌量による生育変化)が、 植物は栽培土壌量が増加するに伴って成長が促進される。

植物科学実験においても、土壌栽培と異なり栽培環境中の栄養成分を容易に調節可能であることから水耕栽培は栄養系の分野にて頻繁に利用されている。 また実際の農業において水耕栽培はビニールハウスの中での半屋外、植物工場での屋内環境の両方で利用されている。この植物工場ではLEDなどの人工光や空調の温度など徹底的な管理環境で効率よい栽培が目指されている。 本ウェブページでは植物工場のミニチュア版として自宅一角規模の水耕栽培の方法を紹介する。


用意するもの

手順

  1. 容器用意
  2. 植物培養液を入れる容器を用意する。栽培時、溶液に藻が発生をするのを防ぐため容器に遮光を行う。遮光のためには容器にアルミテープを張る、黒く着色するなどがある。

    蓋も含めて容器全体を遮光した後、容器の蓋に穴をあける。後の作業ではあけた穴に植物と培養液に空気を送り込むチューブを通す。

    容器 アルミ 穴

    図1. 栽培容器。画像は750 ml容量であり遮光後穴をあけたもの。

  3. 培養液
  4. 培養液を容器にそそぐ。今回は市販の液体培地(ハイポネックス 原液)を水道水で希釈して500 mL利用した。

    培地 ハイポネックス

    図2. 栽培容器にそそいだ培養液500 mLと希釈元となるハイポネックス液肥。画像の溶液は実験的に高濃度容器液としている。
    実際に栽培する場合は商品説明を参考に溶液濃度を調節する。

  5. エアー
  6. 培養液は循環させなければ酸素が欠乏し、植物が根腐れを起こすことに加えて溶液自体も腐敗し異臭を発する。 この酸欠対策として、溶液中に空気を送り込んで溶液をかき回す。 そこで熱帯魚飼育で利用されるエアーポンプ、チューブ、ストーンを接続し、容器蓋の穴に通して溶液に空気を送った。 送る空気量は少量(1秒に5泡程度)で十分である。 1つのポンプで複数の溶液に送風する場合は、チューブをコックで分岐させるとよい。

    ポンプ チューブ穴 攪拌

    図3. 左からエアーポンプ、接続してチューブを穴に通した様子、空気を送る様子。 写真の送風量は多すぎる。もっと絞るべき。
    また今回はポンプを容器よりも上方で宙づり設置している。 やむを得ず容器と同等以下の高さにポンプを設置した場合は、必ずチューブに逆流防止弁を経過させるすること。

  7. 植物用意
  8. 今回は土壌で発芽させた植物の苗を用いる。植物の根についている土壌を洗い流して、容器蓋の穴に根を通して、培養液に根を浸す。

    蓋の上に位置する植物の茎をスポンジで挟み、植物を固定する。

    植物 洗浄

    図4. 土壌に播種、発芽された植物(アズキ)と根に付着する土壌を洗浄する様子。

    根 スポンジ

    図5. 根を培養液に浸す様子と茎をスポンジで挟んで固定させる様子

  9. 照明
  10. 植物に光合成をさせるため照明を設置する。照明の候補には蛍光灯やハロゲン灯など多種あるが、長寿命・少発生熱のLED照明はよく利用されている。 しかし一部LED商品では植物の成長に必要な光波長が照射されないものもある。栽培には植物育成用LEDライトを利用することが無難である。

    LED

    図6. 栽培植物上部に設置したLED照明。製造:コトブキ工芸

  11. 完成
  12. 以上で水耕栽培が開始できる。培養液が減少してきたら適宜足し水を行う。このとき容器の密閉度が高ければ培養液の減少はかなり軽減される。 また足し水とは別に、2週間程度に一度培養液の交換を行うことで培養液中の養分欠乏を防止できる。

    光の照射時間は10時間を基準に調整している。

    スタート

    図7. 水耕栽培の様子

参考

  1. ギネス級のトマトが頭上を覆う! えこりん村の世界一「とまとの森」、北海道ファンマガジン https://hokkaidofan.com/201406tomato/

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